マンションやアパートを管理会社に任せていると、入居者対応や退去後の原状回復、設備修理などを代行してもらえます。しかし、「事前に聞いていない工事費を請求された」「知らないうちに修繕が終わっていた」といったトラブルが起こることもあります。
管理会社がオーナーに無断で工事をした場合、必ずしも請求額をそのまま支払わなければならないわけではありません。ただし、管理委託契約書で少額修繕や緊急修繕について管理会社の判断権限が定められている場合は、支払いが必要になる可能性もあります。
この記事では、管理会社が勝手に工事した場合の考え方、支払い前に確認すべきこと、再発防止のために決めておきたいルールを解説します。
ここでは、過去に実際に相談されていた「管理会社がオーナーに相談せず工事を進めた事例」を紹介します。無断工事の内容やトラブルになった理由を知ることで、自分の物件で同じような問題が起きたときの判断材料になります。
あるマンションオーナーは、物件管理を不動産会社に任せていました。ところが、エアコンの修繕や取り換えといった高額になりやすい工事を、管理会社がオーナーに事前確認せず発注していました。
オーナーには、工事後に領収書だけが送られてきたため、「管理会社にはそこまでの裁量があるのか」と相談しています。
エアコン交換は数万円から十数万円以上かかることもあるため、通常は見積もりを提示し、オーナーの承認を得てから進めるべき工事です。管理委託契約書で少額修繕や緊急修繕の権限がどこまで認められているかを確認する必要があります。
参照URL:不動産管理会社が高額な修繕を勝手に行い請求してきました!|お悩み大家さん
遠方にある賃貸アパートを管理会社に委託していたオーナーの家族が、新しい入居者の書類確認のために管理会社へ電話したところ、初めて「今工事をしている」と知らされた事例です。
管理会社は、入居予定の部屋で洗面台のお湯が出ないことに気づき、オーナーへ連絡せず独断で工事を進めていました。さらに、入居予定のない2階の空室でも同じ工事をしていることが分かりました。
このアパートは、オーナー側では取り壊しも検討していた物件でした。そのため、オーナーにとっては「勝手に工事されたことで取り壊しの判断もしづらくなった」「見積もりももらっていない」という不満につながっています。
遠方物件を管理会社に任せている場合、オーナーが現地の状況をすぐ確認できないため、管理会社の判断に依存しやすくなります。そのため、工事前の連絡や写真共有、見積もり提出のルールを明確にしておくことが重要です。
参照URL:オーナーへ事前報告せずに、管理会社が賃貸アパートの工事をするのはいいのでしょうか|Yahoo!不動産
一軒家を賃貸に出していた大家が、予定より少ない家賃しか入金されていないことに気づき、不動産会社に確認したところ、大家の許可なく複数箇所を修理していたと説明された事例です。
後日、見積もりと領収書が同時に届き、内容はキッチン棚のレール破損による交換、リビング2カ所のカーテンレール交換でした。大家は、現状を確認しておらず、なぜ破損したのかも分からない状態でした。
工事前の写真や破損理由の説明がなければ、本当に必要な修繕だったのか、入居者負担にすべきものではなかったのかを判断できません。無断で家賃から差し引かれた場合は、管理契約書の内容と修繕の経緯を確認する必要があります。
参照URL:大家の許可なく不動産会社が勝手に修繕し家賃から差し引かれました|お悩み大家さん
賃貸物件の所有者はオーナーです。そのため、建物や設備に関する工事は、原則としてオーナーの承認を得てから進めるのが一般的です。特に、原状回復工事、クロスや床の張り替え、エアコン・給湯器などの設備交換、外壁や屋根の修繕、空室対策リフォームなどは、オーナーの費用負担に直結します。
一方で、管理会社の権限は管理委託契約書の内容によって変わります。たとえば、契約書に「一定金額以下の修繕は管理会社の判断で実施できる」「緊急時は事前承認なく対応できる」といった条項がある場合、オーナーが「勝手に工事された」と感じても、契約上は管理会社に一定の判断権限がある可能性があります。
まずは、管理会社がどこまで工事を判断できる契約になっているかを確認することが重要です。
管理会社が事前承認なしで対応できる可能性があるのは、主に緊急性の高い修繕です。たとえば、水漏れ、漏電、給湯器の故障、玄関ドアや窓の破損、雨漏り、共用部の危険箇所などは、放置すると入居者の生活や建物の安全に支障が出るおそれがあります。
民法上も、賃貸人には賃貸物の使用・収益に必要な修繕をする義務があるとされています。そのため、入居者が通常どおり生活できない状態であれば、早急な対応が求められる場合があります。
また、契約書で「1万円未満の修繕は事後報告」「3万円未満の入居者対応修繕は管理会社判断」などと定めている場合、少額修繕については承認不要とされていることもあります。
ただし、緊急対応や少額修繕であっても、工事後の報告、請求内訳、工事前後の写真、業者名の共有は必要です。説明が不十分な場合は、請求内容の妥当性を確認しましょう。
一方で、空室対策や入居促進を目的とした工事は、原則としてオーナーの事前承認を得るべきです。アクセントクロス、床材変更、モニター付きインターホン設置、温水洗浄便座の設置、キッチンや浴室設備のグレードアップ、間取り変更などは、緊急修繕ではなく賃貸経営上の投資判断にあたります。
これらの工事は、費用をかけることで家賃を上げられるのか、空室期間を短縮できるのか、回収見込みがあるのかをオーナーが判断する必要があります。管理会社が「入居者を決めるために必要だった」と説明しても、見積もりや提案がないまま進めるのは問題です。
外壁、屋根、防水、給排水管、エレベーター、受水槽などの大規模修繕も同様です。高額になりやすく、資産価値や長期修繕計画にも関わるため、複数社の見積もりを取り、工事内容・金額・時期を比較することが望ましいでしょう。
支払い義務を判断するには、まず管理委託契約書を確認します。確認すべき項目は、管理会社の業務範囲、修繕工事の発注権限、オーナー承認が必要な金額基準、緊急修繕時の対応ルール、原状回復工事の扱い、工事後の報告義務などです。
契約書に「一定金額以下の修繕は管理会社が実施できる」とあれば、その範囲内の工事費は支払い対象になる可能性があります。一方、「事前にオーナー承認を得る」と定めているにもかかわらず無断で工事された場合は、契約違反を主張できる可能性があります。
ただし、無断工事だからといって常に全額拒否できるとは限りません。工事によって物件の状態が改善され、入居者の生活維持や次の募集に必要だった場合は、一定の費用負担が問題になることもあります。
そのため、支払う前に、工事の必要性・緊急性・金額の妥当性・契約上の根拠を確認しましょう。
管理会社から身に覚えのない工事費を請求されたら、すぐに支払わず、次の資料を求めましょう。
請求書に「修繕工事一式」としか書かれていない場合、金額の妥当性は判断できません。工事項目、数量、単価、諸経費、管理会社の手数料が分かる資料を提出してもらいましょう。
納得できない場合は、「事前承認のない工事費について、契約書上の根拠と工事の必要性を確認したうえで判断したいため、支払いはいったん保留します」と伝え、資料提出を求めます。
同じトラブルを防ぐには、管理会社が判断できる範囲を明確にしておくことが大切です。たとえば、次のようなルールを契約書や覚書に残しておきましょう。
また、「緊急修繕」と「通常修繕」を分けて定義することも重要です。水漏れ、漏電、給湯器故障、雨漏り、防犯上の問題などは緊急対応に含める一方、クロス張り替え、設備グレードアップ、空室対策リフォーム、デザイン変更などは原則として事前承認制にすると、判断がぶれにくくなります。
無断工事が一度だけであれば、担当者の連絡ミスや認識違いの可能性もあります。しかし、無断工事が繰り返される、請求内訳を出さない、工事前後の写真がない、業者名を開示しない、契約書上の根拠を示せないといった対応が続く場合は注意が必要です。
特に、高額工事を毎回同じ業者や管理会社の関連会社に発注している場合は、工事金額が相場に合っているか確認しましょう。相見積もりを取らずに高額工事が進んでいるなら、管理体制そのものを見直すきっかけになります。
管理会社は、オーナーの賃貸経営を支えるパートナーです。報告が不十分で、承認ルールを守らない管理会社に任せ続けると、修繕費や収支管理が不透明になるおそれがあります。
管理会社が勝手に工事した場合、まず確認すべきなのは管理委託契約書です。少額修繕や緊急修繕について管理会社の判断権限が定められていれば、一定範囲の工事費は支払い対象になる可能性があります。
一方で、事前承認が必要な工事を無断で行った場合や、緊急性のない空室対策工事を勝手に進めた場合は、管理会社の対応に問題があると考えられます。
請求を受けたら、すぐに支払わず、工事内容、見積書、請求書、写真、契約書上の根拠を確認しましょう。今後のトラブルを防ぐためには、承認が必要な金額、緊急修繕の定義、相見積もりの基準、写真提出のルールを文書化しておくことが重要です。
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